大津家庭裁判所 平成5年(家)607号 審判 1998年8月05日
主文
相手方は申立人に対し、796万9181円を支払え。
理由
1 申立人は「相手方は申立人に対し、平成3年10月から、婚姻費用の分担金として、毎月40万円を毎月末日限り支払え。」との審判を求めるものであるところ、本件及び当裁判所平成×年(家イ)第×××号婚姻費用の分担調停事件ならびに当裁判所平成×年(家イ)第×××号夫婦関係調停事件の各記録によれば、次の事実を認めることができる。
(1) 申立人は金融機関の経理係として、相手方は不動産会社の社員として、それぞれ稼働している際に知り合い、昭和48年11月17日に婚姻の届出をし、その間に、昭和49年10月7日に長女真琴が、昭和50年12月2日に長男壮太が、それぞれ出生した。
(2) 相手方は、昭和51年4月22日、不動産売買の仲介、建築請負などを業とする○○建設株式会社(旧商号は○△住宅株式会社。以下「○○建設」という)を設立し、その代表取締役として同社を経営して(申立人は専業主婦で無職)、昭和54年12月.京都市△△区所在のマンシヨン「△△ハイム×××号」(以下「△△ハイム」という)を申立人との共有名義で買い受け(共有持分は、土地につき平成元年12月以降各36690分の695ずつ、建物につき各10分の5ずつ)、同所で上記家族全員が同居生活を始めた。
相手方は、△△ハイム買受けに際し、同年11月、戊銀行×支店から住宅ローンとして2000万円を借り受け、以来、後記割賦金を返済している。
(3) 当事者双方は、上記婚姻の当初から円満を欠き、次第に不和となっていたところ、相手方は、平成元年7月ころ、単身、△△ハイムを出て、同年12月ころ相手方単独名義で買い受けた肩書住所である大津市所在のマンシヨン「△×大津××××号室」(以下「相手方マンシヨン」という)に移り、申立人ら家族と別居した〔当時、申立人41歳、相手方44歳、長女14歳(中学3年生)、長男13歳(中学2年生)〕。
相手方は、相手方マンシヨンの買受けに際し、同月、己銀行本店から住宅ローンとして2900万円を借り受け、以来、後記割賦金を返済している。
長男壮太は、翌平成2年1月から相手方マンシヨンで相手方と同居していたが、同年7月、再び、下記の申立人居宅へ戻った。
(4) 申立人は、平成2年3月、肩書住所である京都市○○区所在の土地を買い受けて(自己単独名義で所有権移転登記結由)、その地上に木造3階建の居宅を建築し(自己単独名義で所有権保存登記経由。以下、上記土地、建物を合わせて「申立人居宅」という)、そのころ、上記長女とともに同所へ移住した。
申立人は、申立人居宅を取得するに際し、同年4月、丙信用金庫(現・甲信用金庫。以下略)から住宅ローンとして1000万円を借り受け、以来、後記割賦金を返済している。
(5) 申立人は、上記別居時において、申立人、相手方、長女、長男各名義の、乙信用金庫に対する普通預金、定期預金、定期積金計1118万4595円及び丙信用金庫に対する普通預金、定期預金、定期積金計647万7780円の合計1766万2375円(平成元年5月1日時点)の各預金ならびに満期時支払金計332万5719円、下記解約返戻金計171万0745円、合計503万6464円の簡易保険(相手方が契約者のもののみ。申立人が契約者のものについては、申立人が調査嘱託に同意しないため、その口数及び上記各金額は不明)及び満期時支払金等計2735万4059円、下記解約返戻金等計763万9791円、合計3499万3850円の生命保険、総計4003万0341円の各保険(以下、上記各預金と各保険とを全部合わせて「本件預金等」という)の通帳、証書類の全部を保管しており、その後もその管理を継続して、事実上、本件預金等につき自由に解約などの処分をし得る立場にあったものであるところ、申立人は、上記別居後の平成5年10月に上記簡易保険のうち3口を解約して返戻金計171万0745円の支払を受け、上記別居のころから同年3月までの間に上記生命保険のうち4口の満期支払金及び2口の解約返戻金計763万9791円の支払を受けたほか、本件預金等の一部の解約払戻等を受けて、これらを自己及び長女、長男の生活費や遊興費に当てており、さらに平成5年8月ころ、乙信用金庫に対する上記各預金を全部解約してその払戻を受け、別途保管して上記別居後の生活費などに費消しているが、その費消額、使途、残額など詳細を明らかにしない。
(6) ○○建設は、平成3年5月、大津地方裁判所に、申立人に対し、上記申立人居宅の取得費用である6623万5000円を貸し付けたとして、残金5623万5000円の返還等を求める訴えを提起したが(同裁判所平成×年(ワ)第××号事件)、同裁判所は、平成5年8月11日、上記貸付の事実は認めたものの、その返済については、当事者間に、上記△△ハイムを売却した代金のうち申立人の持分相当額を当てる旨、返済期日を△△ハイム売却時と定める合意があったと認められるところ、△△ハイムは売却未了であるから返済期日は未到来であるとして、○○建設の請求を棄却する判決をした。
○○建設が大阪高等裁判所に控訴したところ(同裁判所平成×年(ネ)第×××号事件)、平成8年3月11日、当事者双方及び利害関係人である相手方との間に、申立人に対する上記金員の直接の貸主は相手方であることを相互に確認するとともに、申立人は相手方に対し、相手方は○○建設に対し、それぞれ上記残金の支払義務があることを認め、申立人は相手方に対し、その内金2650万円の支払に代えて△△ハイムの土地、建物につき有する上記持分を譲り渡すこととし、代物弁済を原因とする上記持分全部移転登記手続をするなどの内容の訴訟上の和解が成立した。
(7) 申立人は、平成3年10月14日、当裁判所に相手方に対する婚姻費用の分担を求める調停(上記第×××号事件)を申立てたところ、相手方は、翌平成4年5月29日、当裁判所に、申立人に対する離婚の調停を申し立て(上記第×××号事件)、両事件につき、同年6月15日を第1回として平成5年7月23日まで8回の調停期日を重ねたが、同期日において、両事件とも合意の成立する見込みのないものとして終了させられ、上記婚姻費用分担調停事件は本件審判事件に移行した。
(8) 相手方は、平成6年10月20日、大津地方裁判所に、申立人に対する離婚及び500万円の慰謝料の支払などを求める訴えを提起し(同裁判所平成×年(タ)第×××号事件)、申立人も、平成10年1月26日、相手方に対する損害賠償を求める反訴を提起したところ(同裁判所平成×年(タ)第××号事件)、同裁判所は、平成10年3月20日、本件婚姻は破綻していて婚姻を継続し難い重大な事由があり、これは、相手方において、台湾旅行時に買春をしたり、その後も他の女性と性関係を結び、あるいはそれを疑わせるような行動をとったうえ、男の甲斐性であるなどと開き直る態度をとったことに起因するものであって、婚姻破綻の原因はもっぱら相手方にあるが、当事者双方の別居期間は約8年6か月に及び、同居期間が約15年8か月であることと対比すると、上記別居期間は相当の長期間であることが認められ、上記長男及び長女はいずれも成人していて、未成熟子は存せず、申立人が離婚によって精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情は認められないとして、最高裁判所昭和62年9月2日判決に従い、相手方の離婚請求を認容し、相手方の慰謝料請求については、申立人において慰謝料請求の原因となるほどの違法性を有する行為があったとまでは認め難いとして、これを棄却し、申立人の1500万円の慰謝料請求については、相手方が上記のような行動をとるに至ったのは、申立人が相手方と別行動をとって旅行に行ったり、他の男性のことを話すなどしたため、相手方が申立人に不信感を抱いたことや、申立人が性交渉を拒否したことも多分に影響しているものと窺えることなどの諸事情を総合考慮して、200万円の限度でこれを認容し、その余は棄却する旨の判決をし、同判決は、同年4月6日の経過により同月7日に確定した(上記判決が認定するところとは異なる事実を認定するに足りる資料は存しない。なお、申立人は上記反訴において、離婚及びいわゆる離婚慰謝料の請求はせず、財産分与を求める附帯請求もしなかったものであり、現在、当事者のいずれからも、財産分与を求める調停・審判の申立てはなされていない)。
(9) 申立人は、後記のとおり、その後、平成9年5月に長女が、平成7年6月に長男が、それぞれ他へ転出したので、現在は、上記申立人居宅に単身で居住している。
申立人は、本件婚姻費用請求時の平成3年10月当時は無職であったが、その後の平成4年3月から株式会社○×企画でパートの従業員として稼働しており、平成10年4月に上記離婚判決が確定するまでの間のその収入額、税などの控除額、その残額である生活費充当可能額(以下、いずれも月額。計算は全て円未満4捨5入)は、次のとおりである。
① 平成3年10月~平成4年2月(固定資産税については、資料がないので平成4年の額による)
(a) 収入 0円
(b) 控除 7万7991円
固定資産税(②に同じ) 5917円
申立人居宅住宅ローン(年額864,888÷12) 7万2074円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) -7万7991円
② 平成4年3月~同年12月
(a) 収入(給与・賞与の年額630,000÷12) 5万2500円
(b) 控除 8万5866円
固定資産税(年額71,000÷12) 5917円
申立人居宅住宅ローン(①に同じ) 7万2074円
職業費(給与・賞与の15%) 7875円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) -3万3366円
③ 平成5年1月~同年12月
(a) 収入(給与・賞与の年額722,555÷12) 6万0213円
(b) 控除 8万7164円
固定資産税(年額72,700÷12) 6058円
申立人居宅住宅ローン(①に同じ) 7万2074円
職業費(給与・賞与の15%) 9032円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) -2万6951円
④ 平成6年1月~同年12月
(a) 収入(給与・賞与の年額861,400÷12) 7万1783円
(b) 控除 9万2499円
固定資産税(年額115,890÷12) 9658円
申立人居宅住宅ローン(①に同じ) 7万2074円
職業費(給与・賞与の15%) 1万0767円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) -2万0716円
⑤ 平成7年1月~同年12月
(a) 収入(給与・賞与の年額1,058,920÷12) 8万8243円
(b) 控除 7万8435円
所得税(年額2,380÷12) 198円
固定資産税(年額117,190÷12) 9766円
申立人居宅住宅ローン(年額662,820÷12) 5万5235円
職業費(給与・賞与の15%) 1万3236円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 9808円
⑥ 平成8年1月~同年12月〔申立人居宅住宅ローン(月額5万5235円)は1月及び2月の2か月分のみ〕
(a) 収入(給与・賞与の年額1,011,250÷12) 8万4271円
(b) 控除 3万2283円
住民税(年額7,200÷12) 600円
固定資産税(年額118,030÷12) 9836円
申立人居宅住宅ローン(月額55,235×2÷12) 9206円
職業費(給与・賞与の15%) 1万2641円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 5万1988円
⑦ 平成9年1月~同年12月
(a) 収入(給与・賞与の年額1,179,140÷12) 9万8262円
(b) 控除 2万3910円
所得税(年額4,800÷12) 400円
住民税(年額3,000÷12) 250円
固定資産税(年額102,250÷12) 8521円
職業費(給与・賞与の15%) 1万4739円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 7万4352円
⑧ 平成10年1月~同年4月(資料がないので、便宜、平成9年と同一額とする)
(a) 収入 9万8262円
(b) 控除 2万3910円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 7万4352円
(10) 相手方は、上記○○建設の代表取締役として、同社から報酬の支払を受けており、上記各期間中における、その収入額、税などの控除額、その残額である生活費充当可能額(以下、いずれも月額。計算は全て円未満4捨5入)は、次のとおりである。
① 平成3年10月~平成4年2月(資料がないので、相手方マンションの固定資産税及び△△ハイムの管理費は平成5年の、その余は平成4年の額による)
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 96万5538円
所得税(②に同じ) 15万6775円
住民税(②に同じ) 10万1333円
社会保険料(②に同じ) 6万7772円
相手方マンシヨン
住宅ローン(②に同じ) 22万0808円
固定資産税(③に同じ) 8502円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(②に同じ) 16万3747円
固定資産税(②に同じ) 1万3908円
管理費(③に同じ) 3万3953円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 23万4462円
② 平成4年3月~同年12月(資料がないので、相手方マンシヨンの固定資産税及び△△ハイムの管理費は平成5年の額による)
(a) 収入(報酬の年額14,400,000÷12) 120万0000円
(b) 控除 96万5538円
所得税(年額1,881,300÷12) 15万6775円
住民税(年額1,216,000÷12) 10万1333円
社会保険料(年額813,260÷12) 6万7772円
相手方マンション
住宅ローン(年額2,649,701÷12) 22万0808円
固定資産税(③に同じ) 8502円
管理費(年額224,880÷12) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,964,968÷12) 16万3747円
固定資産税(年額166,900÷12) 1万3908円
管理費(③に同じ) 3万3953円
職業費(給与・賞与の15%) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 23万4462円
③ 平成5年1月~同年12月
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 97万3874円
所得税(年額2,055,600÷12) 17万1300円
住民税(年額1,132,500÷12) 9万4375円
社会保険料(年額832,560÷12) 6万9380円
相手方マンシヨン
住宅ローン(年額2,652,040÷12) 22万1003円
固定資産税(年額102,020÷12) 8502円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,951,358÷12) 16万2613円
固定資産税(年額168,100÷12) 1万4008円
管理費(月額) 3万3953円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 22万6126円
④ 平成6年1月~同年12月(資料がないので、△△ハイムの管理費については平成5年の額による)
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 92万6404円
所得税(年額1,602,700÷12) 13万3558円
住民税(年額967,100÷12) 8万0592円
社会保険料(年額953,510÷12) 7万9459円
相手方マンシヨン
住宅ローン(年額2,654,280÷12) 22万1190円
固定資産税(年額97,015÷12) 8085円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,884,021÷12) 15万7002円
固定費産税(年額165,900÷12) 1万3825円
管理費(③に同じ) 3万3953円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 27万3596円
⑤ 平成7年1月~同年12月
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 103万9515円
所得税(年額1,531,000÷12) 12万7583円
住民税(年額1,019,400÷12) 8万4950円
社会保険料(年額1,066,260÷12) 8万8855円
相手方マンシヨン
住宅ローン(年額3,822,304÷12) 31万8525円
固定資産税(年額157,909÷12) 1万3159円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,841,838÷12) 15万3487円
固定資産税(年額167,900÷12) 1万3992円
管理費(年額482,690÷12) 4万0224円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 16万0485円
⑥ 平成8年1月~同年12月〔申立人居宅住宅ローン(月額5万5235円)は3月以降の10か月分〕
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 92万5138円
所得税(年額1,689,400÷12) 14万0783円
住民税(年額987,600÷12) 8万2300円
社会保険料(年額1,071,274÷12) 8万9273円
相手方マンシヨン
住宅ローン(年額1,837,623÷12) 15万3135円
固定資産税(年額158,072÷12) 1万3173円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,754,076÷12) 14万6173円
固定資産税(年額169,100÷12) 1万4092円
管理費(年額497,280÷12) 4万1440円
申立人居宅
住宅ローン(月額55,235×10÷12) 4万6029円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 27万4862円
⑦ 平成9年1月~同年12月
(a) 収入(②に同じ) 120万0000円
(b) 控除 96万4980円
所得税(年額1,889,000÷12) 15万7417円
住民税(年額1,068,600÷12) 8万9050円
社会保険料(年額1,102,224÷12) 9万1852円
相手方マンシヨン
住宅ローン(年額1,839,917÷12) 15万3326円
固定資産税(年額138,437÷12) 1万1536円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(年額1,870,728÷12) 15万5894円
固定資産税(年額168,000÷12) 1万4000円
管理費(年額455,160÷12) 3万7930円
申立人居宅
住宅ローン(月額) 5万5235円
職業費(②に同じ) 18万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 23万5020円
⑧ 平成10年1月~同年4月(資料のないものは平成9年の額による)
(a) 収入(報酬月額) 100万0000円
(b) 控除 88万8855円
所得税(月額) 11万0231円
住民税(⑦に同じ) 8万9050円
社会保険料(月額) 9万2832円
相手方マンシヨン
住宅ローン(1月~3月分460,222÷3)15万3407円
固定資産税(⑦に同じ) 1万1536円
管理費(②に同じ) 1万8740円
△△ハイム
住宅ローン(⑦に同じ) 15万5894円
固定資産税(⑦に同じ) 1万4000円
管理費(⑦に同じ) 3万7930円
申立人居宅
住宅ローン(⑦に同じ) 5万5235円
職業費(給与の15%) 15万0000円
(c) 生活費充当可能額((a)-(b)) 11万1145円
(11) 長女真琴は、上記別居後の平成2年4月に京都市内の私立○○○高校に入学して平成5年3月に同高校を卒業し、同年4月に△△大学○○学部に入学して平成9年3月に同大学を卒業し、同年4月に就職して、同年5月からは上記申立人居宅を出て単身別居し、その収入は不明であるが独立した生活を営んでおり、現在23歳である。
長男壮太は、上記別居後の平成3年4月に宇治市内の私立△×△高等専修学校に入学したが、2年3学期の平成5年3月に中退し、そのころから京都で建築関係のアルバイトをし、平成6年9月から四日市で信販会社に勤務し、平成7年3月中旬に申立人居宅にもどり、同年6月から上記申立人居宅を出て上記△△ハイムに入居し、平成8年2月4日に成田ちひろとの婚姻の届出をし、その収入は不明であるが同所で独立した生活を営んでおり、現在22歳である。
(12) 労働科学研究所の算定にかかる、上記各期間中における当事者双方及び長女、長男の「綜合消費単位」は、次のとおりである。
① 平成3年10月~平成4年2月
申立人(60歳未満、既婚女子、主婦) 80
相手方(60歳未満、既婚男子、中等作業、単身加算20)
125
長女(高校2年) 90
長男(高等専修学校1年) 95
② 平成4年3月~同年12月
申立人(60歳未満、既婚女子、軽作業) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(高校3年) 90
長男(高等専修学校2年) 95
③ 平成5年1月~同年12月
申立人(②に同じ) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(大学1年) 100
長男(高等専修学校中退) 95
④ 平成6年1月~同年12月
申立人(②に同じ) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(大学2年) 100
⑤ 平成7年1月~同年12月
申立人(②に同じ) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(大学3年) 100
⑥ 平成8年1月~同年12月
申立人(②に同じ) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(大学4年) 100
⑦-1 平成9年1月~同年3月
申立人(②に同じ) 90
相手方(①に同じ) 125
長女(⑥に同じ) 100
⑦-2 平成9年4月~同年12月
申立人(60歳未満、既婚女子、軽作業、単身加算20)
110
相手方(①に同じ) 125
⑧ 平成10年1月~同年4月
申立人(⑦-2に同じ) 110
相手方(①に同じ) 125
相手方は、申立人に対し、婚姻費用として、上記別居時から平成3年2月までは月額40万円を送金していたが、同年3月及び4月は送金を月額20万円に減じ、同年5月から翌平成4年5月までは全く送金せず、同年6月から翌平成5年6月までは月額20万円を送金した。従って、本件申立時である平成3年10月以降の送金額は計260万円となる。
相手方は、その外に、長女、長男の上記各高校の入学金(長男109万3000円)、学費、長女の大学受験予備校の諸費用(資料のあるのは計39万5000円)、長女の大学の授業料(平成7、8年で計210万8500円)を負担している。
2 上記認定の事実関係のもとにおいて、相手方が申立人に対して支払うべき適正な婚姻費用分担額についての当裁判所の判断は、次のとおりである。
(1) 離婚が成立した場合、婚姻費用は、離婚に伴う財産分与において、その清算がなされるべきものである。しかし、本件婚姻費用分担申立事件のように、事件係属後、資料の蒐集に手間取るうちに当事者間に離婚判決が確定したが、その離婚訴訟事件では財産分与の附帯請求はなされておらず、現在まで、当事者のいずれからも財産分与の調停・審判の申立てがなされていないような場合においては、本件婚姻費用分担請求が、上記離婚判決の確定によって当然に消滅するとか、当然に財産分与請求にその性格を変じると解するのは相当ではなく、本件審判において、上記離婚判決確定時までの間の婚姻費用分担額を定めることができるものと解するのが相当である。
(2) 民法760条、752条に照らせば、別居状態が続き婚姻が事実上破綻していても、離婚しない限り夫婦は互いに婚姻費用分担の義務があるものというべきであり、本件別居も、さしたる直接のきっかけもないのに相手方が一方的に強行したものであるうえ、上記離婚判決に認定のとおり、当事者間の婚姻破綻の原因は、もっぱら相手方の上記行動にあって、申立人には同認定のような慰謝料額の算定に際して考慮すべき事由が存したに過ぎないから、申立人の本件婚姻費用の請求につき、相手方の負担義務を軽減するのを相当とすべき特段の事由は存しないものというべきである。
(3) 申立人は、上記別居時において、申立人、相手方、長女、長男各名義の、合計1766万2375円(平成元年5月1日時点)の各預金及び満期時支払金等総計4003万0314円の各保険の通帳、証書類の全部を保管しており、その後もその保管を続けていて、事実上、本件預金等を自由に処分し得る立場にあり、上記認定のとおり、既に相当部分につき解約などの処分をして、これを費消しているものである。
しかし、将来の財産分与審判の対象となるべき当事者双方の共通財産としては、本件預金等のほかに、上記の申立人居宅、相手方マンシヨン及び△△ハイムの各不動産があり、また、相手方は、相当の価額を有するものとみるべき○○建設の株式の大半を保有しているものとみられるのであって、将来の財産分与審判における調査・判断の結果を待たなければ、本件預金等が双方のいずれに帰属すべきものかは明らかではない(財産分与により、申立人がそのうちの相当な部分を取得することもあり得ることであり、その場合には、相手方からその額を婚姻費用として支払ってもらったことにはならない)から、本件の場合、申立人が本件預金等を事実上支配しているからといって、直ちに、相手方の申立人に対するこれと同額の婚姻費用の前払いがあったものと認めることはできない。
従って、本件預金等については、将来の財産分与審判において、分与の対象財産に含め、申立人において既に処分したものは財産分与の先取りとして清算すべきものとし、本件審判においては、婚姻費用の前払いとしては考慮しないこととする。
(4) 本件婚姻費用分担の始期については、当事者間の公平や相手方が上記別居時以降平成3年2月までは毎月40万円、平成3年3月及び4月ならびに平成4年6月から翌5年6月までは毎月20万円の婚姻費用分担金を申立人に送金していたこと及び前項で申立人の上記預金等の一部解約等を婚姻費用の前払いとしては考慮しないこととしたこととの権衡を考え合わせると、本件請求時である平成3年10月からとするのが相当である。
(5) 相手方は、申立人と同居していた長女及び長男に対しても、未成熟子である間は養育費の負担義務を負い、それは婚姻費用分担義務の一部をなすものである。しかし、子を大学に進学させ得る程度の経済的余裕がある場合には、子が大学入学後に成人に達したのちも、卒業して就職するまでの間は、親はなお養育費の負担義務を負うべきものと解するのが相当であり、他方、未成年者であっても、義務教育を終了した時点で既に稼働能力を有しているのであって、高校に進学しない場合及び進学しても中退した場合は、中学の学業終了または高校の中退時から(遅くとも同時点から稼働準備のために必要な相当期間の経過後は)稼働を期待し得るものであるから、病気など止むを得ないものと認めるべき事由がない限り、未成年であっても、その時点以降は、親はその子の扶養義務を負わないものと解するのが相当である。
そうすると、相手方は、長女真琴については、平成9年3月に大学を卒業し同年4月に就職しているから、同年3月までの間はなお扶養義務があるものというべきであるが、長男壮太については、平成5年3月に高等専修学校を中退しており、その後同人に病気など稼働しないことが止むを得ないものと認めるべき事由は認められないから(申立人は、長男が交通事故により通院した期間がある旨述べるが、その受傷の程度、通院日数などにつき、なんらの資料も提出しない)、遅くとも稼働準働期間として相当な9か月を経過した翌平成6年1月以降は、その扶養義務を負わないものというべきである。
また、上記認定のとおり、相手方は、長女、長男の入学金、授業料などの学費については、月々の生活費とは別途に、その都度負担していたものであるから、本件婚姻費用の場合、長女、長男については、上記学費等を除く月々の生活費のみを考慮すれば足りるものというべきである。
(6) 当事者双方は、それぞれ自己の上記生活費充当可能額をもって、婚姻費用を按分負担するのが相当であり、当事者双方及び長女、長男に配分されるべき生活費の割合は、上記綜合消費単位(1(12))の割合によるのが相当であるから、これに基づき、長女、長男を養育していた申立人に対し、相手方が支払うべき婚姻費用の額を算定すると、その算式は、(当事者双方の生活費充当可能額の合算額)×(申立人の世帯の綜各消費単位の合計額)÷(双方の世帯の綜合消費単位の合計額)-「申立人の生活費充当可能額」であり、その下記各期間の額は、それぞれ次のとおりとなる(円未満4捨5入)。
① 平成3年10月~平成4年2月 18万4311円
申立人の生活費充当可能額(1(9)①) -7万7991円
相手方の生活費充当可能額(1(10)①) 23万4462円
綜合消費単位 申立人80、相手方125、長女90、長男95
(-77,991+234,462)×(80+90+95)÷(80+90+95+125)-(-77,991)=184,311.0
② 平成4年3月~同年12月 17万1620円
申立人の生活費充当可能額(1(9)②) -3万3366円
相手方の生活費充当可能額(1(10)②) 23万4462円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女90、長男95
(-33,366+234,462)×(90+90+95)÷(90+90+95+125)-(-33,366)=171,619.5
③ 平成5年1月~同年12月 16万5402円
申立人の生活費充当可能額(1(9)③) -2万6951円
相手方の生活費充当可能額(1(10)③) 22万6126円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女100、長男95
(-26,951+226,126)×(90+100+95)÷(90+100+95+125)-(-26,951)=165,401.9
④ 平成6年1月~同年12月 17万3247円
申立人の生活費充当可能額(1(9)④) -2万0716円
相手方の生活費充当可能額(1(10)④) 27万3596円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女100
(-20,716+273,596)×(90+100)÷(90+100+125)-(-20,716)=173,246.7
⑤ 平成7年1月~同年12月 9万2908円
申立人の生活費充当可能額(1(9)⑤) 9808円
相手方の生活費充当可能額(1(10)⑤) 16万0485円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女100
(9,808+160,485)×(90+100)÷(90+100+125)-9,808=92,908.4
⑥ 平成8年1月~同年12月 14万5160円
申立人の生活費充当可能額(1(9)⑥) 5万1988円
相手方の生活費充当可能額(1(10)⑥) 27万4862円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女100
(61,988+274,862)×(90+100)÷(90+100+125)-51,988=145,159.6
⑦-1 平成9年1月~同年3月 11万2253円
申立人の生活費充当可能額(1(9)⑦) 7万4352円
相手方の生活費充当可能額(1(10)⑦) 23万5020円
綜合消費単位申立人 90、相手方125、長女100
(74,352+235,020)×(90+100)÷(90+100+125)-74,352=112,253.3
⑦-2 平成9年4月~同年12月 7万0460円
申立人の生活費充当可能額(1(9)⑦) 7万4352円
相手方の生活費充当可能額(1(10)⑦) 23万5020円
綜合消費単位申立人 110、相手方125
(74,352+235,020)×110÷(110+125)-74,352=70,406.4
⑧ 平成10年1月~同年4月 1万2476円
申立人の生活費充当可能額(1(9)⑧) 7万4352円
相手方の生活費充当可能額(1(10)⑧) 11万1145円
綜合消費単位申立人 110、相手方125
(74,352+111,145)×110÷(110+125)-74,352=12,476.3
(6) そうすると、相手方が、上記各期間中、婚姻費用の分担金として申立人に対し支払うべき額は、それぞれ次のとおりであり、その合計額は1056万9181円となる(平成10年4月分については上記離婚判決確、定日の前日である同月6日までの6日分を日割り計算した額とする)。
① 平成3年10月~平成4年2月(5か月分) 92万1555円
184,311×5=921,555
② 平成4年3月~同年12月(10か月分) 171万6200円
171,620×10=1,716,200
③ 平成5年1月~同年12月(12か月分) 198万4824万円
165,402×12=1,984,824
④ 平成6年1月~同年12月(12か月分) 207万8964円
173,247×12=2,078,964
⑤ 平成7年1月~同年12月(12か月分) 111万4896円
92,908×12=1,114,896
⑥ 平成8年1月~同年12月(12か月分) 174万1920円
145,160×12=1,741,920
⑦-1 平成9年1月~同年3月(3か月分) 33万6759円
112,253×3=336,759
⑦-2 平成9年4月~同年12月(9か月分) 63万4140円
70,460×9=634,140
⑧ 平成10年1月~同年4月(3か月と6日分) 3万9923円
12,476×3=37,428
12,476×6÷30=2,495.2
37,428+2,495=39,923
合計1056万9181円
(7) 1(13)に認定のとおり、相手方は申立人に対し、平成3年10月以降の婚姻費用分担金として計260万円を支払っているから、前項の金額からこれを控除すると、相手方が支払うべき残額は計796万9181円となる。
3 以上のとおり、相手方は申立人に対し、平成3年10月の本件申立時から上記離婚判決確定日である平成10年4月7日の前日までの間の婚姻費用分担金として、796万9181円を支払うべき義務があるものというべきであるから、その支払を命じることとし、主文のとおり審判する。